長々とした雑記じみた文章が続くので、まず最初に個人的な感想を分かり易く100点満点での点数で表示しておきます
視聴1回目:20点(2021年11月5日、東京国際映画祭ワールドプレミア上映)
視聴2回目:65点(2022年1月16日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ先行上映会)
視聴3回目:78点(2022年2月19日、チネチッタ LIVE ZOUND × RGBレーザー)
以下10000字超の長々としたネタバレ含む感想文とその評価に至った要因語りです。お暇な方のみどうぞ。
~視聴一回目、2021年11月5日直後に思った感想をそのまま書き連ねています~
映画グッバイ、ドン・グリーズ!の感想やらなんやらです。個人的な点数は上記のとおりなので否定的な意見は見たくないよ、という方はブラウザバックが吉です。
グッバイ、ドン・グリーズ!です。いしづかあつこ監督作品、あの宇宙よりも遠い場所のチームが再び集結しての新作劇場版アニメ!だそうですよ。よりもいファンではあるので見に行かねばとは思っておりましたので先行上映にも申し込んだのですがね…。
結局ここで露呈したのは私は「宇宙よりも遠い場所」という作品が好きなだけであってそもそもアニメ(正確にはドラマ含む動画媒体で物語を見ること)は苦手ということ。それが本作の個人的な評価に直結しています。
という訳で以下各視聴会直後に書きなぐった映画に対する雑感です。
あくまでもアニメを苦手とする自分から見た感想なのであ、やめてください、石を投げないで…。
~2021年11月5日、東京国際映画祭ワールドプレミア上映~
公式HP、ツイッタetc…事前情報を一切仕入れず登場人物名すら全く把握していない状態、先入観無しで上映会に参戦してきました。
まずは上映前の監督、声優さんの挨拶から。
・よりもいは南極を舞台にした彼女たち半径20mを掘り下げた作品。今作は外に外に世界を広げる感じ。
・見所は全部、先入観無しで見てもらえれば
・変顔、鼻の下を延ばしたり表情を崩した表現を多用しています
このコメントを聴いた時点で嫌な予感を感じ始めました…
・劇中の歌のシーンがあるがとても良いのでお楽しみに
このコメントですっごく嫌な予感がますます増大。真っ先に某打ち上げ花火横から下から見るかの謎歌シーンが脳裏によぎり若干のネタバレコメントである事も含め非常~~~に不安になっていました。
しかし無情にもそんな不安をよそにいよいよ上映が開始、以下ネタバレを含むので注意です。
・開幕の自転車シーン
キービジュアルと異なる人物の登場に???と混乱。
・父親の声
エンドロールで田村敦さんと知るまで一切の違和感はありませんでした。滅茶苦茶上手ですね。
・ロウマ、トト、ドロップ集結~やり取り
気心の知れた男友達の描き方、特に感想なし。発声に発声にをかぶせる、テンションとノリだけでする会話。自分もかつてそうであった阿呆な高校生感がよく出ている。
・母親登場
この声を聴いた瞬間それまで没入していた映画の世界感から弾き出され「映画館で作品に集中できずぼんやりスクリーンを眺めている自分、を俯瞰している」状態に。古くはトトロの父親とかがそうですが作品に合わない浮いた声が一人いらっしゃるだけで本当に興ざめするタイプのためしんどいです。
あまりのへたくそさにめちゃくちゃびっくりしました(石直球)
劇場版になると利権関係なのかへったくそなタレントさんを起用しなきゃならぬのか、と非常に強く落胆。と言うかストーリー上居てもいなくても大して変わらないので、芸能人枠を確保する為に無理くり存在をねじ込んだのかなとも邪推。
このシーンでよりもい12話流れてましたがそれどころではない!!というか夕食時に12話なんて食事にならぬぞ。
・女装シーン
鼻の下を延ばしまくる同級生の変顔、唐突な爆音演出にうすら寒さを覚えつつ、この段階で自分の期待していた世界感とのミスマッチを確信。これ以降が上の空状態での視聴となった。
たとえばルパン三世とかギャグアニメとかで上記の演出がされた場合は世界感とのミスマッチは大してないので問題なく受け入れられるが、君の名はのように本作と同じく現実の日本を舞台に現実的な高校生をリアルに描いている作品の中でこのようなギャグテイストシーンが出てきたら、それははたして受け入れられたのだろうか…
たぶんよりもい的であったり君の名はであったり日本の現実にありそうな世界観で等身大のリアルな青春が描かれることを心のどこかで期待していたのであろう。等身大の高校生の青春を真面目に描いたジュブナイル映画を期待していただけにこのシーンあたりからあまりにも見るのが苦痛となっていった。
・花火、クマとの遭遇etc…
同上、リアルな作風を期待していっただけに変顔、ギャグ、コメディチックな挙動すべてがしんどい…。ぶっちゃけよりもいにこれだけのギャグテイストが盛り込まれていたら間違いなく途中で視聴を取りやめていたと断言できるくらい自分の期待していた世界観と実際に描写される登場人物の行動のミスマッチがひどい…
・歌
個人的には滅茶苦茶引っかかってしまった。別に歌を歌う事自体に忌避感はない。歌をバックに3人の行動を描写するのも良い、缶を開けるのに悪縁苦闘したりするところとかね。この行動に至った理由もしっかりしており確かに今までの経緯、置かれた状況からその行動をとるだろうと納得がいく。
しかし問題は「横一列になって」「3人が同じ方向を向いて」「シンクロした同じ踊りを」「まるでその方向から見られていることを理解しているかのように」踊っている描写である。その行動に至った説得力がまるでないのである…。
例えば
踊る、だけならテンションあがって馬鹿始めた、で十分に説明となる。
しかし
「横一列になって」「同じ方向を向いて」、は説明が付かない。馬鹿初めて踊るなら互いにその姿を視認しながら笑いあうような位置関係が普通では???
「シンクロした同じ踊りを」も説明が付かない。馬鹿始めたなら絶対に3人の踊りが揃う筈もない。反証とするなら作中でそのようにシンクロして踊るダンスが登場していれば納得できるがそういった踊りの描写もない。どう考えてもシンクロしているのはありえないのでは??
そして一番気に食わないのは「まるでその方向から見られていることを理解しているかのように」踊るである。結局この踊りは視聴者に3人揃ってダンスしているシーンを見せるがために登場人物たちが製作者によって踊らされている、そのようにしか感じられない演出だった。例えばデットプールがこれをやっているのなら視聴者のことを認識している、第4の壁を超えてくると言う作品の世界観とマッチして面白く感じ取れるのだが、本作におけるこのシーンのこの踊りの演出は「本作の登場人物たちの行動はそれぞれの理念信条背景等に裏付けされ確固たる信念のもとに取られるわけではなく、製作者側が視聴者に見せたいと思った行動をどんなに不自然であろうと取らされますよ」と宣言されているようで心の奥底から落胆した。
個人的にアニメを苦手としている理由にそのキャラクター性によらず脚本演出の都合上上記のような不自然な行動をとらされることに納得できないと言う事が挙げられます。
私が「宇宙よりも遠い場所」というテレビアニメーションを人生で唯一視聴しきることができた理由はこの作品には上記のような不自然な行動がほとんどなく、それぞれの登場人物にしっかりとしたバックボーンが描かれていることで、ああ確かに彼女ならこれまでの経緯、今の置かれて状況にならこの行動をとるだろうと心から納得ができたからなのです。
先の母親の声から映画に没入できていない状態と相まってこの演出には滅茶苦茶ドン引きした。本当に、本当に残念だ。
・手を延ばしてこれに掴まれ、でもぎりぎり届かなくて空振りを繰り返す的な演出
演出と言えばこれも気になった。中盤の川流れと終盤のドロップを追いかける2つのシーンで描かれましたね。
結局この手の演出ってつかめそうでつかめない空振りする、を数回繰り返したのちギリギリで手をキャッチ。しかし直後に足場とか体制を崩して結局自分も一緒に倒れたり流されたりって演出がほぼ100%でしょう?結論がわかりきっている使い古された演出をやる意味ってあるんですかね?
まぁ終盤のドロップに手を伸ばすシーンには直前ローマが引き返そう、無茶をすべきでは無い、を暗喩しているのかもしれませんが…。もう映画に集中していないのでネガティブな感想しか出てこないです。
・変顔、ひどい泣き顔(鼻の下のびて鼻水ずるずる的な)
はっきり言います、この演出きらいです。仮によりもい1話冒頭のキマリさんが上記泣き方をしていたら自分は速攻で電源落として宇宙よりも遠い場所を視聴していなかったでしょう。同じ泣くという表現でも期待していたのはよりもい5、10、11、12話的な表現です。
これは先述しておりますが自分が本作に日本を舞台とした等身大の男子高校生の青春を「リアル」に描写されることを期待していたからです。何度でも言いますが君の名は的な作風です。君の名は、であの泣き方をしていたらドン引きしませんか?ほかの例えは出ないのか?との声が聞こえてきそうですが出ません。なぜなら他にアニメ作品を見ていないので。
・終盤でキックボード、台車から投げ出されても無傷(顎をわずかに擦りむいただけ)
また繰り返しですがあのレベルで地面に投げ出されるシーンがよりもいとか君の名はにあったとしたら大けがをしたりうめき声上げてちょっとはダメージを受けている描写があるはずなのになんで一切描写ないのだろうなと…。演出やストーリー云々以前に絶対大けがする危険なこけ方が気になって内容が入ってこない。
結局日本を舞台にしたリアルな等身大の高校生を描いた作品として見るべきなのかルパン三世みたいに日本が舞台だがリアルではない荒唐無稽な世界観のお話として見るべきなのか、どちらに軸足を置いて鑑賞するべきなのかが最後まで理解できなかった。
・最後に道が水没
冒険の終焉、命の終焉を示す演出と言う事は理解できます。
が国道?県道?市道?レベルの道があの程度の描写の雨で水没して通れなくなるなんてありえるの?という疑問が真っ先に来ました。それとも道中がひどく荒れ果てていましたのであれは廃道を進んでいたという話なのでしたっけ?とにかく母親の声を聴いてから作品に一切集中できていないため粗探しの目線にしかなれない。
※追記:小説にダム湖との記載がありました。いろいろ検索すると実際にも作品のように道路がダム湖につながっている物もあるようですね。
・別れ、死、慟哭
よかったと思います。私が期待していたのはこのあたりの真面目な、というかリアルよりな描写でした。この終盤に差し掛かってからようやく映画に集中し作品内にのめり込め始めました。
・自転車で空港に?
映画冒頭のシーンにつながりました。結局このシーンてどのタイミング(目的)なんでしょうね??
アイスランドに飛び立つために自転車で空港に移動中??だとしたら電車なり十分に余裕をもってロビーに到着しておけって感想しか出ないのですよね。えらく焦って空港に向かっていましたし、しかもその結果人身事故寸前からのガードレール脇をすり抜け滑落という大事故を起こしてますし…。
でもそれ以外に空港目指す理由もないし、何だったんでしょうねホント。
・アイスランドに到着
最初の感想はもう上映終わりますぜ!!!外に世界を広げると言いつつ世界に出るの遅すぎません?でした(中盤からバンバン世界に飛び立っていくものだと思い込んでいたので)
あとコロナが落ち着いたら空港のカットは回収しに行きたいと思いました。時期を合わせてオーロラ鑑賞と一緒に行きたいなと。
・滝、オーロラ、背景美術
きれいだなという感想と同時によりもいにおけるオーロラ演出の二番煎じにも感じた、というのが正直な話
・オチ
あの時の電話がここにつながるのか、と伏線回収にちょっと鳥肌が立った。ただ誰が電話をかけてきたのか不明ってのはどうかな、え?これで終わりなの?と肩透かしにも感じた。
・全体を通したセリフ回し
少しくどいように感じた。よりもいではそれぞれの背景が描かれ、各キャラの立ち位置、関係性から自然と出てきたセリフに感じられ違和感がないのだが今作は全般に回りくどいセリフで唐突に語りを始めるのでイマイチ納得できない。
例:女の子(名前失念)がローマにカメラの話を振るシーン。
そのキャラの背景も立ち位置もローマとの関係性も不明のまま唐突な自分語りのような、説明口調での長セリフが始まるなど、脚本に言わされている感が強かった。
・作品テーマに関する感想
冒頭のあいさつでいしづかあつこ監督より、よりもいに対し本作は外に外に世界を広げていく物語との解説があった。しかし視聴後の感想はひどく狭い世界感、というものであった。
理由は明白で物語のほとんどが国内の、自分の住む町の、すぐ近くの森で、3人だけで完結してしまっているからだ。目的を見出し一歩踏み出し海外まで外へ外への世界が広がったのは最後の最後でしたからね。
何度も引き合いになるが宇宙よりも遠い場所では第一話の段階で一歩を踏み出せなかったキマリさんが報瀬さんと出会い、憧れ、決意を経て今まで踏み出せなかった世界へと飛び出した。その地は呉、国内であるにもかかわらずたった二十数分で本作よりもはるかに、はるかに世界が広がり外へまだ見ぬ何かに挑戦する尊さを描写しきっていると思っている。あの1話で受けた圧倒的な衝撃は今でも鮮明に思い起こせます。だからこそその対比によって余計本作における世界観の狭さが際立ってしまった。
~初回視聴後の正直な感想~
これ、あと2回も見ないといけないの?苦行過ぎる……が嘘偽りない本当に抱いた感想(クリアファイル目当てで2枚前売り券を買っているため)
兎にも角にも自分がアニメを苦手としている描写(現実的な世界観を描いているのに変顔、ギャグ、コメディチックでリアルではありえない挙動をする、どへたくそな声優、裏付け・説得力なく納得できない行動を起こす登場人物などなど)がほぼフルコースで盛り込まれており視聴するのがしんどかった。
繰り返しになるがよりもいがこの作品のように描写されていたら絶対に視聴していなかったと断言できるぐらい自分とは演出が合わなかった。
本当に自分は宇宙よりも遠い場所が好きなだけでアニメ好きでもなんでもないと言う事を強く再認識させられた1日だった…。
世間一般における作品の評価はどうなるのでしょうね?近くの席にいらした方はエッモ!と大興奮されていましたのでたぶん自分のような否定的な感想は稀なのでしょうか。感想を言い合えないだけにモヤモヤがたまります…
結局のところ意識しないように前情報を遮断していたと言いつつも、あの自分史に燦然と輝く文字通り私の人生を変えた「宇宙よりも遠い場所」スタッフによる最高のアニメーションなんだ!!と兎に角よりもい的な作品が見られると意識しまくっていたというのがミスマッチを生んだ原因ともいえました。
とは言え逆によりもいスタッフによる~との情報がなければツイッターなどで不意に流れてくるPVから自分にとっては絶対に見に行かないと判断する類の作品に分類されてしまいますから難しいところです。
ちなみに低い点数となっていますがコレは決して面白くないという意味ではなく、あくまで作風が自分に合わなかったことによる低評価と言う事です。豪華な声優陣と相まって特に女性人気はすごいことになるのだろうなとは思っています。
~1回目と2回目の間にあった重大な出来事~
(ドングリーズとは直接的には関係ないので読み飛ばしても問題ないです)
ドングリーズの落胆から1週間余り自分にとっての人生観のひっくり返し、2回目の視聴へと導いてくれた作品との出会いがありました。「アイの歌声を聴かせて」です。
テレビアニメーションでは「宇宙よりも遠い場所」のみ、劇場では「君の名は」「若女将は小学生」「打ち上げ花火横から見るか下から見るか」に続く人生5本目のアニメーションでした。
この作品をご覧になった方も多いかと思いますが先述の私がアニメーションを苦手としている描写に該当するシーンがほぼありませんね、そればかりか実際に現実として有り得そうな生活感あふれるシーン、それぞれの持っている背景、考え、人間関係それらから生み出される説得力のある行動の数々。素晴らしかった……。
2021年11月13日に初回視聴を経て同12月31日までの僅かひと月半の間に10回も劇場に足を運びました。その中で数々の描写ひとつづつに明確に目的があり意味がある事、また映画館でしか感じることのできない音響や細やかな演出など今までの自分の人生になかった数々の気づきを得ることができました。
「宇宙よりも遠い場所」が自分の命を救い人生を変えた作品とすると「アイの歌声を聴かせて」は今までの人生観をひっくり返してくれた、自分史に確実に乗ってくる作品でした。
前置きが長くなりましたが上記素晴らしい作品との出会いそして学びを通したことで自分が忌み嫌い唾棄すべきものと感じた数々の演出にも目的意図意味すべきものがありもう一度作品を見直すべきではないか、そう奮い立ち2度目の視聴に挑んだのです。
本当に前置きが長いッッッ!!
~2022年1月16日、TOHOシネマズ六本木ヒルズ先行上映会~
そんな訳でスタッフトーク付上映会に当選し2回目の視聴へ。こんな後ろ向きの人間が当選してしまうとは申し訳なく思ったものです。
さてアイうたを通して以前とは異なった映画の見方を教わったとはいうものの自分が苦手な描写が多いことには変わりありません。
がしかし、それらの演出には意味があり、それをくみ取る見方をする。声がへたくそなのは我慢。目を逸らさずしっかりとストーリーを理解し描こうとしている世界を感じること。これらを胸に2度目の視聴に挑みました。
以下感想
かけがえのない時間そしてそれを切り取る写真、そこに写るはあの日確かに掛替えのない冒険を共にしたドロップの笑顔
地元を離れての進学すら躊躇ったのに一歩踏み出せばあんなに遠く手の届かないと思っていた世界にたどり着ける
地球の裏側だと思っていた世界は隣同士ですぐそこの出来事なのだ
小説(含むあとがき)やインタビュー記事を含めたことで描写したい、伝えたいことは理解できた。それらが全編通して自分も高校当時無知で阿呆であったように馬鹿やりながら悪態ついていたずらしてその時の勢いとノリ、テンションだけで生きていることが分かる。今なら女装とかノリが過ぎた~(頭抱え)みたいなテンションも少しは納得がいった。けれどそれとは別に、明確によりもいでは感じなかった違和感が2回目の視聴で確信に変わったのでつらつら書いてゆこうと思う。
・ローマのドロップへの思いの吐露(謝るなよのシーン)
おそらく本作における最大の見せ場、涙を誘うシーンなのでしょう。
例えるならよりもい11話、日向さんの友人たちに対する報瀬さん大立ち回り、のシーンですね。よりもいのあのシーン・演出どうでしたか?胸に刺さりましたか?みなさん涙しました?私は号泣しました。
でもドングリーズのこのシーンは一切胸に刺さらずむしろ薄ら寒さすら感じました。
なぜ似たようなシーンでこれほど差があるのか。理由は明白で結局ローマがこのセリフを吐露するに至る説得力(描写、理由づけ)が薄いからではないかと思うのです。
よりもいを見てみましょう。このシーンに至るまでに報瀬という人物がどういうものなのか生い立ち、性格、決して折れぬ信念を持ち、そして周囲の人間と日向たちとの関係性。ポンコツで情熱家で一直線まっすぐな性格が嫌というほど描写されてきました。元気で明るいあの日向の弱さが描かれました。理不尽が、友達を傷つけた、決して許せないものが目の前に広がっている……。そう、彼女なら心から信頼する仲間のためにあの行動をとるのだろうと誰もが納得するでしょう。そして彼女の持つ熱は伝播し新たなうねりをもって大人たちをも突き動かしていく…。うーん文字にしても名作of名作たまりませんねぇ。
ではドングリーズは?ローマとドロップ出会って数日です(小説版でも「数日」と明記)。作中ではすでに打ち解けた後で、出会いも、仲良くなった過程も描かれていません。余命わずかと気が付いたのもこの半日です。
確かに2人が出会ってから新しい世界が広がり、かけがえのない冒険を共にしたことは事実です。しかしローマが激情家である描写もないままイキナリ思いのたけを長台詞回しでぶちまけ始めてもやはり説得力に欠け、うーん脚本に言わされている感が強いという感想しか出てこないのですよね。
この辺りの描写不足と言うのはテレビアニメーションとは異なり時間的制約の多い劇場版ならではの問題なのでしょうかね。
・チボリという人間の存在意義
作中ではローマに対し気付き、作品としてのテーマを示唆することが多かったですね。
列挙すれば
写真、今を切り抜き確かにそこに存在した、命のきらめきを残すもの。
世界、遠くて遠くてローマにとって関わり合いになれない別世界(だった)のもの
地球の裏側、旅立ってしまえば隣り合わせ、あんなに広いと思っていた世界も一歩踏み出せば案外近いものだ
などなどでしょうか
で、彼女の存在意義という仰々しいタイトルですが、彼女が最初に登場したネモフィラ畑でのローマとのやり取り皆さんはどう感じましたでしょうか?
私にはとても白々しいセリフで、まるで説明をするだけのために登場させられているような印象を受けました。写真が好き、それはなぜか云々を語るのはよいにしてもヤケに説明口調でさらに言えば上述の通り彼女の人間性(性格生い立ち信念理念クラスでの立ち位置等々)が一切描かれていないせいでなぜ写真が好きなのか、何故ローマに語り始めたのか、それらの説得力が見えないのです。
そして人間性が見えないまま前述の気づきをローマに与える役割を担っているため、まるで「製作者チームが伝えたい作品テーマを分かり易くセリフに起こしたり行動で示したりする舞台装置」のように見えてしまったのです。斜に構えた見方かもしれませんがどうしてもセリフが説明口調かつ単調なためこうした感想を抱いてしまいます。
・セリフ回し全般
1回目の視聴でも感じたことそして上述のローマのドロップへの吐露、チボリの独白とも関連します。
よりもいにはなかったある種の回りくどさを感じていましたがその原因をいろいろ考えた結果下記要因が浮かび上がってきました。
「登場人物の感情が言葉として吐き出されている」ではなく「登場人物が感情・心理状態・考え・作品のテーマをすべて言葉で説明している」のではないかというものです。
例えば同じよりもいにおけるこのセリフ
「私、誰も踏んでいない雪に足跡をつけるの好きなんだよねー!」
報瀬の母親、貴子のセリフ。史上初の民間南極チャレンジに携わりエネルギッシュで道を切り開く人物像が描かれていることから、ウンウン貴子ってそれ好きそうだよね、とすとんと言葉が入ってきます。
これが本作では
「私、誰も踏んでいない雪に足跡をつけるの好きなんだよねー!」「だってさ其処はまだ誰も歩いたことのない道ってことで私が初めて到達したってことなんだよ」「誰も見たことのない世界を切り開くってとっても素敵なことじゃない!」
このように長々と説明をしてしまっているのですよね。どうでしょうか、各種シーンでの特に長セリフ回しの際にこの傾向が顕著ではないでしょうか。どこか説明口調で白々しく感じたこの違和感が説明付く気がします。
・楽曲
感想を書く為記憶を掘り起こしていましたがほとんど思い起こせず。ちょっと焦ります。
中盤のお星さまと終盤に主題歌が流れた事、女装シーンで爆音が流れていた記憶はありますが道中の記憶がない…。音楽に意識が向いていなかった自分にちょっとショックです。3回目の視聴の際にはこの辺意識したいところですね
とまあ長々と感想を書いてきました2回目の視聴ですが、アイうたによる成長で1回目には気が付けなかった様々な演出、テーマの描写等に気が付くことができました。とは言え散々っぱら述べてきたとおり私が苦手とする演出がこれでもかというほど盛り込まれているため宇宙よりも遠い場所ほど熱狂的に嵌ることはありませんでしたね。
決してつまらないとか駄作だとかいう訳ではありません。描きたいこと、作品を通して伝えたいメッセージ性も明確で老若男女幅広い人たちに受け入れられる良い作品だと思います。純粋に楽しめていない、ホントめんどくさい性格をしている自分が嫌になります。
先行上映組によるネタバレ無しの感想ツイートなどもちらほら目にするようになってきましたがすべて大絶賛ですね。2022年の最高傑作決定だとか、いしづかあつこ監督は日本アニメ界における最重要監督の一人に駆け上がっただとかetcetc…。
本感想ではネガティブ的な意見ばかり書き連ねておりますがまぁこれも感想のひとつとしてこうしてブログにしたためておこうと決意した次第です。
さて本上映が始まり3回目の視聴をしたときどのような感想に変わるのか、今から楽しみではります。いや、チケット購入済みの上で3回目に行かない可能性も十分にあるんですけどね…。
~2022年2月19日、チネチッタ LIVE ZOUND × RGBレーザー~
やってきました3回目の視聴です。
公開初日の感想ツイートにおいて僅かながら嵌らなかった類の呟きを見つけ少なからず自分の感想がまるきり的外れではないことに安堵したと同時に初回から3か月、2回目から1月以上間が空き大分クールダウンができてきました。此処で過去書き殴った感想文を客観的に読み直してみましたがなんかぶち切れまくりですね、率直に引きます。
またこの期間に公開されたインタビュー記事等々により自分が忌み嫌った演出についての狙いも理解、改めて冷静になった状態で鑑賞に挑みました。まぁ最大の目的は特典のパンフなんですけどね。
そんな訳で以下感想書き殴り。
・作品への没入感
母親の声で意識が作品外に弾き飛ばされた1回目、そのイメージを引きずり過ぎた2回目。3回目の今回ようやく全編を通して作品に没入することができ実質1回目の視聴となりました。(しかしアイうたでも思いましたがチネチッタのLIVE ZOUND × RGBレーザーは画質・音共に段違いでしたね、これも作品への没入度を増す要因となりました)
・特に印象の変化したポイント
①会話の掛け合い
前2回では斜に構え+没入していない影響で丁々発止の掛け合い、脳みそ使わず脊髄反射の会話に会話が被る演出を感じていませんでしたが改めて見るとなかなかうまくやっているなと。特に今回は不平不満を捲し立てるトトのやり取りが心地よく聞こえたり。
②言葉以外から読み取れる演出
以前複数回差し込まれる2人の積み上げた関係性に疎外感を感じるドロップと言ったわかりやすい演出しか気が付けませんでしたが他2人についても合間合間に見せる言葉外での感情表現、美術背景等を用いた心情表現等いろいろ発見がありました。
③小物
秘密基地ペンギンのほかに日向さんTシャツデザインっぽいジャンボタコさんウインナみたいな置物?人形ありましたね。冒頭の夕食シーンでの12話放送と合わせよりもいポイントですね。ほか皆さん気が付かれたポイントありましたかね?
④挿入歌
記憶よりもだいぶ多かった。よりもいと印象が違ったのは曲の流れたシーンの中の2?3?回は声、効果音等が入らない曲のみの演出だったからでしょうか。何となく君の名は、天キノコ的な印象を受けましたね。どっちがどうという訳ではありませんが。
⑤ギャグ、コメディチックな動き
白々しい世界観にミスマッチという感想から年相応の脳みそを通してない脊髄反射の行動会話、男子高校生のアホウっぷりを表現するにはあり……………なし寄りのあり程度には考えを改めました
⑥音
最終盤のタキオン、音響に優れる環境なだけあって重低音が響きました。初回がこの環境なら最後の伏線回収と併せてとても感動しただろうなと。後この環境だと12話報瀬さんのモノローグがはっきり聞こえて面白かったですね。食事にならんぞお父さん!!
・逆に変化しなかったポイント
長丁場に渡るセリフ回しの違和感、これはぬぐえなかった。序盤でドロップが語るシーンも追加ですかね。どんな違和感かわ2回目の書き殴り感想を参照と言う事で。
と言った感じで過去2回受け入れられなかった演出の数々を受け入れようやく映画本来の評価を得ることができました。改めてよい作品だとは思います、作品テーマも演出も。ただ90分という時間的制約によって所々説明、説得力不足な場面を感じたりセリフ回しの違和感がぬぐえなかったり…。よりもい初見の脳天からつま先まで走った衝撃、全力で頭蓋をぶんなぐられたようなショックには及びませんでした。
と言った感じで12000字を超えた感想文も終了です。よりもい感想でもこんな長文の書いたことはありません。それだけよりもいに続くきっと素晴らしいはずである作品を正当に評価できなかった自分自身が恨めしく悔しく苦しくて思いの丈をぶちまけなければ心の平静が保てなかったのでしょう。3か月の時を経てようやく呪縛から解放されました。来週2月25日以降には入場者特典第2弾に切り替わると言う事で、次は晴れ晴れとした気分で視聴に向かえそうです。
ではこの糞駄文に長々とお付き合いいただきありがとうございました。と書きましたが最後まで読まれた方いるんですかね?自分なら途中で読むのあきらめますよこんな読みづらいブログ…。
ではまたいつかどこかで